2026.08.19
“最初は不安だった” 医療的ケアに入ったスタッフの話

──不安は消えるものじゃない。少しずつ、自信に変わっていくもの。
こんにちは。自立生活企画ユニオン代表の有川です。
6月のブログでは、「医療的ケアができるヘルパーの仕事」について書きました。あれから、こんなメッセージをいくつかいただいています。
「興味はあるけど、自分にできるか不安です」「未経験でも、大丈夫ですか」
たしかに。医療的ケアって、文字で見るとこわく感じるのは当然だと思います。だから今回は、私が話すよりも、実際にその不安を越えてきたスタッフの声を届けたいと思います。
目次
昔からの知り合いが、うちに来た話
今回話してくれたのは、ユニオンに入って数年になる男性スタッフです。いまは医療的ケアの現場に入り、後輩の指導にもあたっています。実は彼、私の昔からの知り合いなんです。
介護の仕事をしていると聞いて、「うちに来ないか」と声をかけたのがきっかけでした。知り合いだから誘ったわけではありません。人に対してまっすぐな男だということを、昔から知っていたからです。
ただ、入社したころの彼の第一声は、こんな言葉でした。「吸引とか、正直こわいよ。ミスしたらどうしようって思って」介護の経験はありました。でも、医療的ケアははじめて。当時の彼にとって、喀痰吸引や経管栄養は、病院で看護師さんがやるものというイメージだったそうです。
「自分の手で、人の呼吸に関わることをしていいのか。そこが一番こわかった」と、彼は当時を振り返ります。
「最初は不安だった」の正直な本音
研修は受けた。手順も頭には入っている。それでも、いざ現場に立つと手が震える。彼が語ってくれた、当時の本音はこんなものでした。
・手順は覚えたのに、目の前の人の顔色が気になって手が止まる
・万が一のことが頭に浮かんで、夜も眠れない日があった
・「俺に務まるのか」と、何度も思った
・知り合いの会社だからこそ、「迷惑をかけられない」というプレッシャーもあった
この最後のひとつは、私も覚えています。知り合いだからこそ遠慮してしまう、その気持ちは本人以上に、私がよくわかっていました。だから入社のとき、彼にこう伝えたんです。
「ここでは、知り合いの前に、ひとりのスタッフとして見る。遠慮はいらない。わからないことは、絶対にその場で聞いてくれ」と。 こういう不安って、決して弱さではないと私は思います。人の命に関わる仕事に、不安を感じない人のほうが少ない。むしろ、不安を感じられることは、この仕事に誠実に向き合っている証だと思っています。
不安が、少しずつ変わっていった瞬間
では、彼の不安はどうやって変わっていったのか。劇的な瞬間があったわけではないそうです。あるのは、小さな積み重ねでした。
・最初の数ヶ月は、先輩とずっと同行していた
・「これ、合ってますか」を、遠慮せず何度も聞けた
・終わったあとに、一緒に振り返る時間があった
・そしてある日、ご本人に「お前が来る日は、安心して眠れる」と言われた
彼は言います。「不安がなくなったんじゃない。不安の中でも、手が動くようになった。それが自信なんだと、あとで気づいた」この言葉、私は今でもはっきり覚えています。
いまの彼が、新しいスタッフに伝えていること
いま、彼は新しく入ったスタッフの同行についています。手が震えている後輩に、こう声をかけるそうです。
「震えていいよ。震えるってことは、ちゃんと向き合ってるってことだから」わからないことは、その場で聞く。不安なことは、ひとりで抱えない。できなかった日は、帰ってから一緒に振り返る。彼が受け取った支え方を、そのまま次の人に渡している。これが、ユニオンの“育て方”の本当の姿です。
代表として思うこと
求人を見ている方に、ひとつ正直にお伝えしたいことがあります。「最初から不安なく働ける人」なんて、いません。うちのスタッフは男性ばかりですが、全員が不安の中から始まっています。私自身もそうでした。
それから、ひとつだけ付け加えさせてください。「知り合いの紹介で入るのって、気まずくないですか」と聞かれることがあります。正直、縁故採用には良い面も悪い面もあると思っています。だからうちでは、知り合いであっても基準はまったく変えません。そのかわり、入ったあとは全員同じように、同行して、振り返って、一人前になるまで支えます。
だからユニオンは、不安な人を責めない。不安なまま一人にしない。そのための同行制度と、振り返りの時間を、これからも守っていきます。
「医療的ケア、興味はあるけど不安」──その不安を持っている人こそ、この仕事に向いていると、私は本気で思っています。
最後に
今日も、ここまで読んでくださってありがとうございます。 もし、
「医療的ケアに挑戦してみたいけど、一歩が出ない」
「現場で働く人の、生の声をもっと聞いてみたい」
「見学だけでもしてみたい」
そんな方がいたら、ぜひ気軽に声をかけてください。応募の話の前に、まずは不安なこと、気になっていることを聞かせてください。ユニオンは、“不安から始められる会社”であり続けます。
来月も、よろしくお願いします。
自立生活企画ユニオン
代表 有川
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